「座りっぱなし症候群」 の原因を知ろう

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「座りっぱなし症候群」のさまざまな不調は、長時間の座りっぱなしによって引き起こされていると考えられますが、それは何故なのでしょうか?「座りっぱなし症候群」の原因は、大きく分けて2つあります。対策するには、原因の仕組みを正しく知ることから始めましょう!

原因① 血のめぐりの悪化

原因の1つ目は、血のめぐりの悪化です。座っている状態では膝を折り曲げたり、足をぶらぶらして力が入りません。さらに、足を組むと膝の裏にある静脈を強く圧迫してしまうため、血流が心臓に戻らず静脈還流が悪くなるからだと考えられます。つまり心臓に血が戻らず、体の下部に血流が溜まってしまうのです。

血のめぐりが大切な理由と、
座りっぱなしを避けるべき理由

原因② 脱水状態

2つ目の理由が、徐々に進行する「脱水」です。オフィスで座っていると、実は喉の渇きに気付いていなくても脱水がおこっている可能性があり、安静にしていても気付かないうちに500~600mℓ程度、体重の1%の脱水は起こりえます。自分で意識的に水分補給をしないと、脱水状態に陥りやすいといえます。

どうしてオフィスで脱水が起こる?
その理由

ここにも注意!意外なポイント

上記の2つの問題に加えて、「座りっぱなし症候群」のリスクを高める要注意ポイントがあります。例えば、筋肉の少ない女性は、体内の水分量も少ない傾向があるため、男性よりも注意を払う必要があります。また、脱水といえば夏のイメージがありますが、オフィスではむしろ冬でも脱水が起きやすい可能性があります。

「座りっぱなし症候群」 のリスクを高める
「意外なポイント」

血のめぐりが大切な理由と、
座りっぱなしを避けるべき理由

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「座りっぱなし症候群」の原因のひとつは「血のめぐりの悪化」であると述べましたが、血のめぐりと健康はどういう関係なのでしょうか。また、座りっぱなしが与える影響とは具体的にどのようなものなのでしょうか。

「静脈」の流れの善し悪しが健康を左右する

血管の種類は、動脈、静脈、毛細血管の3種類。そのうち、二酸化炭素や老廃物を回収して、送りだされた血液を心臓に戻す役割を果たすのが「静脈」です。体内の血液の多くは「静脈血」として各臓器にプールされたり循環しており、その量は、動脈に流れている分量の4倍とも言われます。ゆえに、静脈の流れが健康のカギを握っていると言ってもいいでしょう。

座りっぱなしは静脈還流を滞らせる

デスクワークをしていると、膝を折り曲げ、椅子に膝の後ろ側が圧迫された状態になります。こうなると、膝の後ろ側を流れる静脈の血流が悪くなり、余分な水分や老廃物は静脈やリンパ管に回収されにくくなります。そもそも、血液は重力の影響によって下半身に滞りやすくなっていますので、結果として、水分や老廃物がむくみとなって、特に足やふくらはぎに溜まってしまうのです。

調査事例

ニュージーランドで行われた調査(※)によると、同じ体勢で90分以上座り続けていると、膝の後ろに流れている静脈血流は50%も減少し、昼食もデスクでとり続けると血栓発症のリスクは2.2倍になるという結果が出ています。

(※) 出典:Aviat Space Environ Med; 75:500-504, 2004
http://www.dailymail.co.uk/health/article-2144533/Lunchtime-heath-risk-How-quick-sandwich-desk-double-risk-DVT.html

どうしてオフィスで脱水が起こる?
その理由

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「座りっぱなし症候群」の原因のもうひとつは「気付きにくい脱水」ですが、そもそもオフィスでどれほど水分が失われるのでしょうか。また、気付きにくいとはどういうことでしょうか。

なぜオフィスワークでも水分が失われるか

私たち人間は、尿・便で 1日約1600mℓの水分を排出するほか、汗でも放出します。しかし、これ以外にも目に見えない無意識のうちに失われる水分があり、それが、呼吸や皮膚から蒸発する水分「不感蒸泄(ふかんじょうせつ)」です。

皮膚から失われる水分は1日あたり約600mℓ、呼吸によって水蒸気として放出される水分は約300mℓと、あわせて900mℓにもなります。

これが、オフィスで座りっぱなしで運動もしていないのに感じる喉の渇きの原因のひとつです。

気付きにくいとはどういうことか

人は、喉の渇きを、口や喉の粘膜の乾燥や脳の視床下部の中にある口渇中枢により、からだの水分量が少ないことを感知して働きます。

喉の渇きに従って水分を補給すれば、水分不足にならないはずですが、オフィスでは仕事に集中するあまり、多少の喉の渇きに気付かず仕事を続けてしまう傾向があります。

「喉が渇いた」と感じる時には既に水分不足がかなり進んでいる可能性があり、これが脱水になりやすい理由です。オフィスの中でも意識的に水分補給をすることが大切です。

「座りっぱなし症候群」 のリスクを
高める 「意外なポイント」

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「座りっぱなし症候群」の2大原因である「血のめぐりの悪化」「気付きにくい脱水」のほか、「座りっぱなし症候群」のリスクを高める意外なポイントをいくつかご紹介します。

①【女性】男性よりも水分が少なく要注意!

筋肉は、他の部位よりも水分を多く蓄えます。脂肪は10~20%ですが、筋肉は75~80%が水分です。

一般的に女性は、その筋肉の量が男性よりも少ない傾向にあります。ゆえに、女性は男性よりも体内の水分量が少なく、脱水になりやすくため、より注意が必要です。

また、脱水状態になると血液の塩分濃度が濃くなり、薄めるために全身の細胞が自らの水分を差し出します。そのため、皮膚の細胞にも水分がなくなり、肌のかさつきにも繋がるため、女性の方は特に気をつけたいところです。

②【冬】冬でも水分補給に油断禁物!

夏は気温も高く汗を多くかくため、自然と水分を摂るようになりますが、冬は脱水に対する警戒心が下がってきます。しかし、乾燥の激しい冬は、不感蒸泄が増え、知らない間に体から水分が奪われていきます。

さらに、冬のオフィスは、気密性も高く、エアコンが効いていることで、屋外よりも10~20%湿度が低くなる傾向にあるため、オフィスワーカーの不感蒸泄はさらに高まっている可能性があります。

また、寒い季節には体を温めてくれる飲み物が欲しくなりますが、お茶やコーヒーには利尿作用を持つカフェインが含まれていますから、飲み過ぎは控えるべきです。

③【陽だまり】太陽の熱は渇きを速める!

「脱水症」は、炎天下の屋外で発汗を伴うような運動や労働をしたときに起こるというイメージが強いのですが、室内でも起こる可能性があります。

夏の場合、気密性の高いオフィスビルなどは風通しが悪く、体温が上昇してしまう可能性もあります。さらに、冬の室内は空気が乾燥し、水分が体から失われやすい状態になり、「冬脱水」に陥りやすくなります。

室内で特に気をつけたいのは、陽の当たる窓際。冬に日だまりで日光浴をするのはポカポカして気持ちが良いものですが、太陽からは輻射熱(ふくしゃねつ)という熱を受けることになります。輻射熱を受けるとさらに水分喪失が増えて「冬脱水」のリスクが高くなります。