「座りっぱなし症候群」 を予防しよう

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「座りっぱなし症候群」の原因は、血のめぐりの悪化と脱水状態にあると分かりました。しかし、座りっぱなし自体はなかなか避けることができない現実があります。では、どのような予防が可能なのでしょうか?水分で出来ている体のことを理解しながら、効果的な対策をとれるようにしましょう!

水分と体液

体の半分以上は水分で占められており、この体液が生命の維持、活動に重要な役割を果たしています。座りっぱなしは、体液の一つである血液の循環を悪くするうえ、血液の質まで悪くしてしまいます。つまり、予防するには、体を動かして血をめぐらせることと、水分をこまめに補給することが有効です。

座りっぱなしのときこそ大事な水分補給

カフェインが多い飲み物で体液を失っている可能性も

オフィスではコーヒーやお茶がよく飲まれていますが、カフェインの多い飲料は水分補給のための飲料としては適していないとされています

お茶やコーヒーは水分補給にならない

対策① 足を動かそう!

血をめぐらせるためには、ちょっとした運動が有効です。特にふくらはぎは第2の心臓といわれるほど大切な部位で、ふくらはぎの筋肉が弱ってしまうと、血流が悪くなってむくみやすくなります。立ち上がって体を動かすほか、座っていても足のポジションを変えたり、つま先やかかとを基点にリズミカルに動かしてください。

オフィスでできる簡単リフレッシュ法

対策② イオン飲料で水分を効果的に摂取しよう!

水分補給は、喉が渇く前に常温の水分をこまめに摂取するのがポイントです。目安としては1時間にコップ1杯ずつを継続的に摂取し、1日1500mℓ程度摂取するといいでしょう。特に、飲み物の中でも、イオン飲料は、ナトリウムイオンの働きで、体内に水分をある程度保つ仕組みを持っているので、オフィスでの水分補給に適しています。

イオン飲料が水分補給に適する理由

座りっぱなしの時こそ大事な水分補給

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予防に取り組むには、私たちの体に対する理解や、座りっぱなしのオフィスワークで起こりがちな問題点についての理解が必要です。

体重の6割が水分

水は、人間が生きていく上でもっとも大切なもののひとつです。体の半分以上は水分で占められています。体に含まれる水分を「体液」と呼びますが、この体液が生命の維持、活動に重要な役割を果たしています。

標準的な成人男子の場合、体液の量は、体重の60%を占めていますが、そのうち40%までが細胞の中にあり、残り20%が、血液(血漿)、リンパ液など、細胞の外に存在します。水分不足が起きると、細胞の水分が抜けることで肌のかさつきの原因になったり、血液(血漿)の量が不足してドロドロの状態となり、エコノミークラス症候群に繋がる血栓ができるなどのリスクを招いてしまいます。

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座りっぱなしほど水分補給が疎かになりがち

当委員会で行った調査の結果から、座りっぱなし時間が長い人ほど、水分補給が不足していることが分かりました。1日の座りっぱなし時間が4~5時間の人は、必要な量を補給しているものの、6時間を過ぎると理想の水分摂取量からかけ離れていく結果に。8~9時間の人は、理想の量の80%程度、10時間以上の人は65%程度しか摂取していないのです。このことから、座りっぱなしの時ほど水分補給が疎かになりがちであると考えられ、意識的な対策が必要といえます。

お茶やコーヒーは水分補給にならない

オフィスでの水分補給を考えるにあたって、今の実態を見直してみましょう。皆さんは普段どんな飲み物を飲んでいるのでしょうか。また、それらは水分補給として適しているのでしょうか。

オフィス飲料トップ3「お茶」「水」「コーヒー」と他の飲み物を圧倒

当委員会では、オフィスでよく飲まれる飲料についても調査を行いました。その結果、「お茶類(78.5%)」「水/ミネラルウォーター(51.6%)」「コーヒー(50.2%)」の3種類の飲料は、他の飲料に対して圧倒的に飲用機会が多いことがわかりました。

オフィスワーク中に飲むもの(複数回答)

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利尿作用があるカフェインが多い飲み物で、 体液を失っている可能性も

コーヒーやお茶に多く含まれるカフェインには、腎臓の血管を拡張する働きがあります。腎臓は血液を濾過して老廃物や塩分を尿として体内に排出しますが、カフェインによって腎臓の血管が拡張することで血流量が増し、この濾過を亢進させて尿の生成が増加します。

そのため、カフェインの多い飲料は、水分補給のための飲料としては適していないとされています。

オフィスでできる簡単リフレッシュ法

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血のめぐりを良くするには、ときどき足を動かすようにしましょう。ここでは、当委員会の委員であり国際ヨガ協会師範代である長田一美先生による、座ったままできる簡単なリフレッシュ法をご紹介します。

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長田一美 (おさだ・うつみ) NPO法人国際ヨガ協会師範代

1949年2月10日生まれ。NPO法人国際ヨガ協会師範代。バッチ財団登録プラクティショナー。

インド・スワミ・ヴィヴェカナンダ・ヨーガ研究財団(sVYASA)ヨガ療法士養成講座修了。

現在、読売・日本テレビ文化センター恵比寿、川崎ほか8つの教室で指導を行う。自治体主催の講座も開いている

著書に「実年齢を信じてもらえないほどきれいな人になる方法」(ブルーロータスパブリッシング)など。

脚裏伸ばし

イスの前のほうに腰掛け、両手でイスの横を持っておきます。両足を揃えて脚を前に伸ばします。 息を吐きながら、足先を手前に引いて、アキレス腱を伸ばし、吸いながら背中を頭頂までまっすぐ伸ばします。できるだけゆったりと息を吐きながら、脚裏に心地よい痛みがあるところまで上体を前傾します。吐き切ったら、吸いながら上体を中ほどまで戻します。もう一度息を吐きながら、前に。同様にもう一度(計3回)。

イスでのねじりのポーズ

浅く腰掛けて、右脚を上にして組みます。左手で右膝、右手はイスの背もたれを持ちます。息を吸いながら背筋を頭頂まで伸ばして、ゆったりと吐きながら視線を右に回し、顔、首、肩と、体を上から下へ続いて回してゆきます。視線 はできるだけ横に回してください。すっかり息を吐き切ったらサッと吸いながら体を戻します。あと2回繰り返します(計3回)。左回転も、左脚を上に組んで同様に3回。

目から頭のクリーンアップ

両手を温かく感じて汗ばむくらいこすり合わせます。息を吐きながら、手の平の中央に目を当てます。ゆったりとした呼吸で5回くらい、手の平からエネルギーが眼球に送り込まれることをイメージしてください。気分によって数回繰り返してもよいでしょう。

長田先生よりコメント

体液や老廃物の巡りを良くするためには、リンパの流れを意識してみましょう。オフィスで簡単にできるストレッチをするだけでも、体全体を動かせばリンパの流れは良くなります。デスクワークが主で、なかなか体を動かすきっかけがない方なら、ただ深い呼吸を心掛けるだけでも違ってきます。一心に働いていると、息が止まっていたり、口で呼吸をしている人が案外多いんですよ。

ヨガを習いに来る女性たちの多くは、肩こりや便秘に悩まされています。どんなに良い姿勢で座っていたとしても、動かなければ体は固まってしまうんですね。

もう一つ大事なことは心の持ち様です。夜寝る前は一日の反省が頭をよぎる、という人は多いはずです。でも反省ばかりしていては重たい気分になり、良質の睡眠は得られません。一日の締めくくりは気分良くありたいもの。自分を責めたり叱ったりするのではなく、優しくいたわってあげましょう。常にポジティブ思考を持ち、自分自身を大切に。

イオン飲料が水分補給に適する理由

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「座りっぱなし症候群」の予防として水分補給が大事であることは分かりましたが、何を飲むことが良いのでしょうか。お茶やコーヒーでは、利尿作用のあるカフェインが含まれるので適さない一方、イオン飲料が適していることをご説明します。

1.ミネラルウォーターよりも体に残る!

前述のとおり、水分補給が体液として残るには「電解質」が必要です。

イオン飲料と水とを比較したとき、イオン飲料のほうが尿として排出される量が少なく、長時間体に留まり続けることが分かっています。

つまり、イオン飲料は水よりも座りっぱなしの際に適した飲み物といえます。

座位開始から2時間目の排尿量と飲料貯溜率

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出典:Aviat Space Environ Med 2004; 75: 500-504を改変

2.血液がドロドロにならない!

血液(血漿)の量を維持することは、飛行機内でおこるエコノミークラス症候群のリスクを避ける意味で重要です。ミネラルウォーターと比較してイオン飲料は、血漿量を維持することが分かっています。

また、血液粘度についても、イオン飲料の場合は飲んだ後3時間後まで変化しないという結果となりました。つまり、血をサラサラに保つためにイオン飲料は有効と考えられます。

座位安静中の血漿量と血液粘度の変化

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Doi T., et al. Aviat Space Environ Med, 2004